
作品にも絵具の層があり、それが麻と木枠でできたキャンバスの支持体に結びついている。こうした「層」の概念が展示空間の構成の軸となった。麻の網を用いて作品を空間に拡張し、前後に配置することで、作品と空間の境界が曖昧になる。視点の移動により作品の見え方が変わり、それに伴って鑑賞者の体感も変化する。この関係性を探ることで作品が単独ではなく、空間と作用し合い鑑賞者に響く可能性を考えた。また、支持体からアプローチした作品を制作した。これまでも、麻布や和紙のキャンバスを試みてきたが、今回はより構造そのものに踏み込んだ作品となった。木枠に釘打ちをし、麻紐や裂いた麻布を手織りした支持体、あるいは板材を枠状にして内部に油彩を重ねるなど、作家の意図を一部離れて、土台づくりの過程から作品に向き合う新たな可能性を探った。





展示によせた文(一部抜粋)
展示空間を下見した際、壁の手前にあるラックによって、新たな「層」が生まれていると感じた。(中略)作品にも絵具の層があり、それが麻と木枠でできたキャンバスの支持体に結びついている。こうした「層」の概念が展示空間の構成の軸となった。麻の網を用いて作品を空間に拡張し、前後に配置することで、作品と空間の境界が曖昧になる。視点の移動により作品の見え方が変わり、それに伴って鑑賞者の体感も変化する。この関係性を探ることで作品が単独ではなく、空間と作用し合い鑑賞者に響く可能性を考えた。また、窓と押し入れの窪みとの光の対比が絵具を視覚的に変化させたり、更衣室に一点のみを配置することで、全体の作品群との対比を際立たせた。
作品と空間の関係性を探るのと並行して、制作や展示を通して絵画という枠組みを考え直したい。数年前から、絵具への素材としての関心が増したことで、表現は平面から半立体へと広がった。そのような造形色の強い制作が増えたことで、自分自身も絵画の制作認識が揺らぐなか、作品は依然として絵画に分類されることが多い。伝統的にキャンバスに用いられる木枠や麻といった素材を解体し、それらに改めて向き合うことで、絵画とは何かを再考する試みを続けている。

Exhibition photo by Junto Mizuishi